企業幹部の会計学
今や国際的にも主流に
新聞や雑誌などを見ていると、「連結決算」とか「連結ベースでは・・・・」といった表現をよく目にします。この「連結決算」や「連結ベース」とは一体何のことでしょうか。
【ソニーを例にすると】
例えば、「ソニー」の場合、オーディオやビデオ、テレビなどのエレクトロニクス事業を行う「ソニーイーエムシーエス」、家庭用ゲーム機事業を手掛ける「ソニーコンピューターエンターテイメント」、映画やテレビ番組事業を行う「ソニーピクチャーズエンターテイメント」、金融事業を取り扱う「ソニー銀行」や「ソニー生命」など数多くの子会社や、関連会社を有しています。
「単体決算」とは、親会社であるソニーと、子会社であるソニーイーエムシーエス・・・・などが、それぞれ個別に決算書を作成して報告することをいいます。
しかし、この「単体決算」では、それぞれの会社の業績はわかりますが、ソニーグループ全体の業績まではわかりません。
【グループ全体を掌握】
そこで、ソニーグループ全体としての決算書として作成されるのが、「連結決算書」です。
「連結決算」とは、親会社と、その支配関係にある子会社や、重要な影響力を及ぼしている関連会社などを、別々の会社としてではなく、一体となった1つの企業グループとして捉えて、その業績を把握する方法のことをいいます。
国際的にも、連結決算が主流となっており、日本でも単体決算よりも連結決算での財務数値が重視されていることから、新聞、雑誌では連結ベースでの報道がなされています。
【必要性とメリット】
この連結決算を行う必要性やメリットには、主に次の2つの点があります。
@企業間の比較
企業グループによって、その経営形態には様々な形があります。1社だけで製造から販売、サポートまで行っている企業(X社)もあれば、製造は親会社A社が行い、販売は子会社B社、サポートは子会社C社が行っているという場合(A社グループ)もあるでしょう。
こういった状況だと、X社の決算書とA社、B社、C社の単体決算書とを比較してもあまり意味がありません。
A社、B社、C社がA社グループとして連結決算書を作成してはじめて、X社の決算書との企業間比較が可能となり、どちらが業績が良いかなどを見比べることができるようになるのです。
A粉飾行為の防止
親会社A社の業績が良いか悪いか判断する場合に、A社の単体決算の決算書だけを見ているのでは十分ではありません。A社の業績がよく見えても、実は大量の在庫を子会社B社に押し付けて利益を作り出し、損失をB社に付け替えている可能性があるからです。
【意味のない経理操作】
しかし、企業決算において連結決算が主流となった現在では、子会社は、親会社が支配している会社として連結決算の対象に含めなければならず、赤字や債務を押し付けたりするような経理操作は、連結決算では全く意味のないものとなっています。
北國TODAY 2009年夏号 Vol.55に載りました