中野一輝公認会計士事務所
コラム

 企業幹部の会計学
   スピーディーな決算必至

 平成20年4月1日以後開始する事業年度から、上場会社などに対して四半期報告書の制度がスタートし、1年になろうとしています。
 四半期ごとの財務諸表や業績の概況を報告する四半期開示は、これまでも証券取引所の自主ルールとして導入され定着してきていましたが、金融商品取引法に基づいて開示が義務化されていたのは中間決算だけでした。
 それが金融商品取引法に則った制度として、四半期報告書を作成し、提出することが義務化されるようになったわけです。
 財務情報は極めて重要な投資情報となることから、近年では適時にかつスピーディーな決算書の開示が強く求められています。
 今回の四半期報告書は、こうした背景から、投資家に対してよりタイムリーに企業情報を提供する開示を義務付けた制度といえます。


【提出期限が半分に】
 四半期報告書の提出期限は原則として決算日から45日以内とされています。これまでの中間報告書が90日以内とされていたことから比較すると、期限が大変短くなりました。
 また、従来の取引所ルールに基づく四半期開示とは異なり、四半期報告書は、「四半期財務諸表に関する会計基準」に準拠した会計処理が必要となります。
 さらに、これまでも中間財務諸表には公認会計士や監査法人による「監査」が義務付けられていたように、四半期報告書に含まれる四半期財務諸表についても、公認会計士、監査法人による「レビュー(監査証明)」を受けることが義務付けられています。
 提出方法も、EDINET(電子開示システム)にて提出する場合には、世界標準のXBRL形式に統一するように変更されました。その際には、EDINETタクソノミ(電子的ひな型)であらかじめ設定された勘定科目から各社の実態にあったものを使用しなければならず、そういう意味でも事前にチェックをし、準備を早めておく必要があります。


【記載ミスに要注意】
 3月決算会社の第1四半期報告書の提出期限は今年8月14日でしたが、提出期限当日に提出した会社は全体の約28%もあり、直前3日間で提出した会社だけでも約76%という結果でした。
 新制度への対応が不十分だった会社が多かった、ということがわかります。開示までの期間がこれまでより半分の期間に短縮されたわけですから、各企業の経理担当部署では、決算日程の大幅な前倒しが必要不可欠となっています。
 四半期報告書は、年度末の有価証券報告書に比べると四半期報告書は記載内容が大幅に簡素化されたものの、提出された四半期報告書では記載ミスが60件発生し、訂正報告が相次いでなされていたことが分かりました。
 具体的には、会計期間の誤記載や、四半期損益計算書や四半期キャッシュフロー計算書での金額記載ミスなどが多く見受けられたようであり、忙しい開示作業になっているとは思いますが、注意が必要です。


【月次情報から見直し】
 有価証券報告書を作成していない中小企業の場合には、この四半期報告書の作成は不要ですが、決算の早期化の必要性という点では同じであると思われます。
 中小企業の場合でも、毎月の月次情報の作成をいかに迅速にできるかの見直しを通じて、スピーディーに、かつ、ミスのない決算をできる体制の構築を目指していくべきでしょう。


北國TODAY  2009年新春号 Vol.53に載りました

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