中野一輝公認会計士事務所
コラム

 企業幹部の会計学
   世界的視点の正常化進む

 最近、NHKでドラマの題材に「監査法人」が使われたり、新聞雑誌で公認会計士に関する記事が多く掲載されるなど、監査法人や公認会計士の仕事に対して大変注目が集まっています。

【大手監査法人の解散】
 昨年7月、トヨタ自動車・ソニーなど日本を代表する企業を顧客とし国内最大手の監査法人であったみすず監査法人(旧中央青山監査法人) が解散し、監査法人としてのすべての業務を終了させました。
 旧中央青山監査法人は山一證券・ヤオハン・足利銀行など粉飾決算をしていた破綻会社の監査を担当してきたとともに、2005年に発覚したカネボウの粉飾決算事件では、同監査法人所属の公認会計士が粉飾を指南していたとされ、公認会計士3名が起訴されました。
 そして、監査への社会的信頼性を失墜させたことから、2006年5月に金融庁の公認会計士・監査審査会より、7月1日から2か月間の監査業務停止処分をうける異常事態となりました。
 その後もみすず監査法人は、監査を担当していた日興コーディアルグループの有価証券報告書の虚偽記載を見逃していたことが大きな問題となりました。


【不祥事で会計士流出】
 こうした不祥事の連続により、多くのみすず監査法人所属の会計士が他の監査法人へ移ったり、新しい監査法人を設立するなどの動きが続き、最大手であったみすず監査法人は解算することとなったのです。


【過失認定の判決で衝撃】
 今年4月18日、大阪地方裁判所で、大手監査法人の一角であるトーマツ監査法人に対して、株式会社ナナボシに関する監査上の過失を認め、1700万円の支払いを命ずる判決が出されました。
 これまでも監査法人や公認会計士に対して法的責任を認める判決が出されたことはありましたが、上場企業の粉飾決算を見逃した過失による賠償責任を認めた判決が出されたのは、前例のないものでした。
 監査法人は捜査権限があるわけではなく、会社が出してくる資料に基づいて判断をする立場にあります。赤字決算を免れようと組織ぐるみで隠蔽工作を行っていたナナボシの粉飾行為に賠償責任を認める判決が下されたことは、単にトーマツ監査法人だけでなく、公認会計士業界全体にとって衝撃的な判決となりました。
 こうした会社決算の粉飾を監査法人が見過ごしてきた事例への反省から、現在の監査法人は監査を必要以上に厳格化させているという人もいます。
 しかし、現在の監査は、厳格化したというよりも、従来の日本的風土での監査から、グローバルスタンダードに沿った監査へと進化したというべきでしょう。世界的な監査の視点からはむしろ正常化したにすぎないと思われます。


【エフロン事件で体制強化】
 エンロン事件を教訓に企業の内部統制組織をチェックするシステムを作り、SECの検討体制を強化したアメリカの先例は日本の監査制度にも大きな影響を与えずにはおかなかったのです。


北國TODAY  2008年秋号 Vol.52に載りました

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