企業幹部の会計学
サブプライムローンに学ぶ「証券化」の危うさ
【損失が世界に拡大】
アメリカのサブプライムローン(低所得者向けの高金利型住宅ローン)の焦げ付き問題が、世界中に拡大しています。
アメリカ金融最大手シティグループでは、サブプライム関連の追加損失が最大110億ドル(約1兆2600億円)にのぼると見られており、また、アメリカ証券大手のメリルリンチは79億ドル(約9000億円)の評価損を計上しました。
国内金融機関にも影響が出ています。みずほフィナンシャルグループは、平成19年9月の中間連結決算にグループ全体でサブプライム関連損失を約700億円計上しており、下期にも1000億円の追加損失を計上する見通しが発表されました。
【住宅バブルの崩壊】
サブプライムローンの問題の本質は、アメリカでの住宅バブルとその崩壊にあります。
サブプライムローンは、住宅価格が値上がりし続けるという住宅投資ブームに乗って急拡大してきました。ただ、利用者の中には、本当に住む目的で住宅を購入したわけではなく、値上がりを期待して転売目的で購入した人や、値上がりした自宅を担保に新たなローンを借りて、高価なものの消費などに使った人も少なくなかったようです。
サブプライムは、当初の金利は年5〜6%と低いのですが、数年後には10%を超える高金利となるものです。住宅の購入後に住宅が値上がりすれば、担保価値が高まってサブプライムより金利の低いプライムローンに借り換えができます。
しかし、平成18年後半から、アメリカで住宅価格の上昇にブレーキがかかり、場所によってはマイナスに転じたことから、高金利に切り替わる前にプライムに移ろうとしていた利用者が借り換えできず、返済に行き詰るケースが続出したのです。
【拍車かけた証券化】
これだけだとサブプライムローンは、単なる貸し手である住宅ローン会社と、借り手である住宅購入者の間の問題に思えます。ところが、世界中の広い範囲にこの問題の影響が波及しているのは「証券化」に原因があるのです。
サブプライムローンの直接の貸し手である住宅ローン会社は、回収リスクの回避を目的としてその債権の一部をまとめて、住宅ローン担保証券(RMBS)として金融機関などに販売しました。そして、それを購入した金融機関は、さらにその証券を組み合わせた合成債務担保証券(CDO)として再証券化し、ファンドなどの投資家や別の金融機関に販売したのです。
現在、損失を出しているのは、こうした証券を購入した投資家や金融機関、さらに再証券化したものの売れ残りを抱え込んでしまった金融機関などです。
【時価評価会計を】
現在の企業会計基準では、こうした証券化された金融商品については、時価により評価することが求められています。従って、証券の時価が下がってしまったことから、その評価損の計上が必要となり、大きな損失を生む会計処理が進められているのです。
こうした時価評価会計は、何もサブプライム関連証券に限定されるものではありません。国内中小企業でも、保有の有価証券については時価評価が求められており、投資商品の購入には注意が必要です。
北國TODAY 2008年新春号 Vol.49に載りました