企業幹部の会計学
ブランド価値と会計
皆さんが、お店で買い物をするとき、どういう視点で商品を選ばれるでしょうか。
もちろん価格が決定に際しての重要な基準になると思います。しかし、必ずしも一番安いものが選ばれるとは限りません。
【数値で表示できない価値】
むしろ、価格を考慮したうえで、次のような要素を取り入れて決められるのではないでしょうか。
・ その商品やサービスが優れている
・ その商品のコンセプトや企業の理念に賛同できる
・ ブランド名が広く知れわたっており、その品質に安心できる
・ インターネットなどにより商品の情報を入手して買い物ができる
・ アフターサービスが充実している
企業では今、こうした数値では表せない価値に注目しています。そして、事業戦略の構築にあたってこのような要素が非常に重要な部分を占めるようになってきております。
【ほしいと思わせる力】
こうした数値では表せない価値の中でも、特に「ブランド」が、企業の競争力の源泉として大変注目されています。
たとえば、女性の憧れの的であるルイヴィトンであるとか、エルメスがあります。ファッション業界では、商品の個性がより求められるため、他業界よりも差別化の価値が高いとされており、様々なブランド戦略が展開されているのです。
「ブランド」については、明確な定義があるわけではありませんが、ブランドとは、「自己の商品を他の商品から区別するための商品名称やシンボルマーク、模様や、その商品を見た際に想起させるイメージ等の総称」であるといわれます。
簡単に言えば、“その名前を聞いたり、ロゴを見たりするだけで欲しいと思わせる力” だといえるでしょう。
顧客はその企業のブランドに愛着や信頼を覚えたり、付加的な価値があると思うと、そのブランドを拠り所にして商品の購入を決定したりします。また、ブランドが確立されると、ブランドを通じて継続した顧客関係を維持できるようになります。
こうした価値は一朝一夕に生み出されるものではありません。地道な企業努力の積み上げによってこうした優位性は生まれてくるのです。
【計上されないブランド】
この競争優位性を意味する「ブランド」は、現在のところ、企業会計上の貸借対照表には計上されないものです。
企業会計では、ブランドの一部である「商標権」や、他社を買収した際などに生じる「のれん」などを資産として計上することは可能ですが、企業内部で地道に作りあげた超過収益力を生み出す無形の価値(専門的には「自己創設のれん」といいます。)を資産計上することは許されていません。これは、目に見えない価値を、客観的に正しい金額で評価するのがとても難しいからなのです。
【決算書で価値考慮を】
このように、決算書には企業の競争優位性を示すブランド力は反映されていません。このため、企業の本当の価値を見ていくには、決算書に表示された数値だけではなく、ブランド価値についても考慮していく必要があります。
北國TODAY 2007年秋号 Vol.48に載りました