企業幹部の会計学
内部統制の整備・運用の重要性 その2
内部統制の充実が必要
【内部統制の充実】
最近の新聞記事を見ていると、上場企業における不適切な財務内容の開示や企業不祥事などの事例が非常によく見られます。
例えば、日興コーディアルグループでは、同社の子会社である日興プリンシパル・インベストメンツが実質的に支配している会社を、連結の対象に含めなかったことや、本来計上することができない有価証券の評価益を計上していたことなどが判明しました。
また、冷凍食品大手の加ト吉では、実際には商品を動かしていないのに、商品が複数の企業で転売され最終的に元の企業に戻ってくるように伝票上だけで売買されたようにする取引(循環取引といいます。)に関わっていたことが明らかになりました。
これらは、相互牽制機能の弱さなど社内管理体制の重大な不備が原因であったといわれています。企業経営者は、会社の大小を問わず社内管理体制をしっかり構築して間違いが発生しにくいようにし、また間違いが発生しても相互チェックや事後チェックにより発見できるようにしなければなりません。
このようなシステムのことを、内部統制と呼んでいます。
【アメリカや諸外国の対応】
アメリカでは、エンロン事件等をきっかけに、企業改革法(サーベンス=オックスリー法)において、内部統制報告制度が導入されました。同様の制度はイギリス、フランス、韓国等でも導入されています。
【上場会社では内部統制報告制度が義務化に】
日本においても、証券取引所に上場している会社を対象に、財務報告に係る内部統制の経営者自身による評価と公認会計士等による監査が義務付けられることとなりました。
そこで、経営者は、内部統制が機能するように社内制度を構築し、それを適切に機能させていくことが求められています。具体的には、社内規程等で明確なルールを作り、会社内のすべての人がそれぞれの立場でそのルールに従って行動する必要があります。
また、内部統制の整備状況や運用状況は適切に文書で記録されて、保存されなければならないことになっています。
【会社法における内部統制】
会社法においても、取締役や使用人の行う業務が法令等を遵守(コンプライアンス)して行われるようにするための体制や、情報の保存及び管理に関する体制などの内部統制システムの構築が求められています。
特に、大会社(直前期末の資本金5億円以上又は負債200億円以上の会社)では、こうした内部統制システムの構築に関する基本方針を取締役会で決議し、実施していくことが求められています。
【内部統制の勘どころ】
とくに皆様に知ってほしいのは、日本でも様々な不正が起きて、企業の存亡にかかわる状態に遭遇している事例がたくさんあることです。売上の架空計上、集金の会社への未入金、工事代金の水増し、経費の不正請求などなど経理にめぐるところでも事件にことかきません。
要は、上は社長から下は社員の全員が、「不正は我が社で起きても決して不思議ではない」と認識して、事前チェックと事後チェックができる管理制度を作ってそれを実際に実施することでしょう。
北國TODAY 2007年夏号 Vol.47に載りました