企業幹部の会計学
臨時計算書類
「会社法において臨時決算が可能に」
【臨時計算書類の導入】
会社法制の現代化を目的とした「会社法」が、平成18年5月1日から施行されていますが、その改正事項の一つとして、臨時計算書類制度があげられます。
この臨時計算書類制度は、@上場会社等においては半期報告書制度が導入され、四半期報告もなされていることから、会社法においても、株主や債権者に対する適時な財産状況等の開示制度を整備する必要があること、
また、A各事業年度に係る貸借対照表に基づき行う分配規制についても、当期の期中損益等を反映させることを可能とし、株主に対するより柔軟な利益還元につながることから導入されたものです。
具体的に、臨時計算書類に関する一連の流れは、取締役会設置会社、監査役設置会社を前提とすると、以下のようになります。
(1)臨時計算書類の作成
(2)臨時計算書類の監査役の監査
(3)監査を受けた臨時計算書類に関する取締役会の承認
(4)臨時計算書類の株主総会の承認
(5)臨時計算書類の備置き及び閲覧等
このように、臨時計算書類についても、各事業年度に係る計算書類とほぼ同様の手続きが求められていますが、株主総会への招集通知に際しての株主への提供及び公告までは求められていない点で異なっています。
【臨時計算書類の内容、表示方法】
臨時計算書類とは、臨時貸借対照表、臨時損益計算書をいいます。臨時計算書類には、会社法の条文上では、株主資本等変動計算書や個別注記表は含まれません。
しかし、日本公認会計士協会が平成18年11月10日に公表した「臨時計算書類の作成基準」によれば、会社法の要請はないものの、臨時計算書類の作成に際しては、
少なくとも継続企業の前提に関する注記、重要な会計方針に係る注記、重要な偶発事象に関する注記及び重要な後発事象に関する注記が必要であるとされています。
また、臨時計算書類の表示については、会社計算規則の規定において異なる取り扱いが示されていないことから、原則として各事業年度の計算書類の表示に準じて記載することになります。
ただし、分配可能額の算定に影響がない科目等については、簡便な表示でも差し支えないと考えられ、実務においては、個々の会社の実情に応じて適宜表示科目等を見直すことにより、臨時計算書類を作成することになります。
【臨時決算が複数回行われる場合】
会社法の規定では、年に複数回の臨時決算を行うことが可能ですが、この場合の決算手続きの方法として、例えば、2回目の臨時決算では、1回目の臨時決算日の翌日から2回目の臨時決算日までの損益を表示するのではなく、
あくまで臨時決算日の属する事業年度の初日から2回目の臨時決算日までの損益を表示することになります。すなわち、1回目の臨時損益計算書に表示された売上等の損益は、2回目の臨時損益計算書の売上等の損益に再び含めて表示されることになります(累計方式の採用)。
北國TODAY 2007年春号 Vol.46に載りました