企業幹部の会計学
繰延資産
「会社法の下での繰延資産の会計処理が明らかに」
【実務対応報告が公表された】
平成18年5月1日に施行された会社計算規則では、繰延資産として計上することが適当であると認められる項目を繰延資産として計上すると規定されているだけであり、また、
その償却方法も事業年度の末日において相当の償却をしなければならないとされているだけで、具体的な定めがありませんでした。
そこで、平成18年8月11日、企業会計基準委員会は実務対応報告「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」を公表し、繰延資産の会計処理について当面必要と考えられる実務上の取扱いを明らかにしました。
【繰延資産として扱う項目】
この実務対応報告では、以下の項目を繰延資産として取扱っています。
@ 株式交付費
A 社債発行費等
B 創立費
C 開業費
D 開発費
なお、旧商法上で繰延資産として列挙されていたもののうち、建設利息は会社法の施行により廃止され、社債発行差金は「金融商品会計基準」により社債金額から直接控除する方法がとられることとなりました。
【会計処理】
上記@からDの項目については、原則として支出時に費用として処理しますが、繰延資産として計上することもできます。繰延資産として計上した場合には、次の表のように償却計算を行っていくことになります。
旧商法では、毎決算期に均等額以上の償却をしなければならないとされていたため、計上月にかかわらず一律に年数を基準として償却をすることが一般的でしたが、会社法ではそのような制約がなくなっており、
月数等を基準とした償却を行っていくことになります。
|
償却期間 |
償却方法 |
株式交付費(注1) |
3年以内のその効果の及ぶ期間 |
定額法 |
株式交付費(注2) |
社債の償還までの期間 |
原則として利息法 |
創立費 |
5年以内のその効果の及ぶ期間 |
定額法 |
開業費 |
5年以内のその効果の及ぶ期間 |
定額法 |
開発費(注3) |
5年以内のその効果の及ぶ期間 |
定額法その他の合理的な方法 |
(注1)株式交付費には新株の発行費に加えて、自己株式の処分に係る費用を含みます。
(注2)新株予約権の発行に係る費用は、3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法により償却をします。
(注3)「研究開発費等に関する会計基準」の対象となる研究開発費については、発生時に費用として処理しなければなりません。
【適用時期】
この実務対応報告は、公表日(平成18年8月11日)以後に終了する事業年度及び中間会計期間から適用されます。
北國TODAY 2006年秋号 Vol.44に載りました