企業幹部の会計学
税効果会計とは
企業会計は、損益計算書によりその期間の経営成績を、貸借対照表により期末の財政状態を表示する事を目的としております。しかし、今迄損益計算書に表示された税引後の「当期純利益」は、その会計期間の企業業績を必ずしも適正に表わしておりませんでした。それは、損益計算書の「税引前当期純利益」より控除される「法人税、住民税及び事業税」の額が、当期の適正な税金コストの額を反映したものになっていなかったためです。
【法人税法の規定適用で矛盾】
法人税等の金額は、企業会計で言う費用収益対応の原則により計算されるのではなく、法人税法の規定により計算されるため、このような矛盾が生じてしまうのです。
そこで、法人税法により計算される税額を「企業会計上の利益」から計算される税額に調整した方が、企業の業績をより反映した当期純利益を知る事が出来ると考えられるようになりました。
図1
今までの税額
[ |
企業会計上の税引前当期純利益 ± 法人税法による税額 |
] |
×税率 =法人税法の規定による調整 |

費用収益対応の原則により業績を反映した税額
企業会計上の税引前当期純利益 ×税率 =あるべき税額
図1のように当期純利益を「費用収益対応の原則」に基づき、より正確に計算するべく導入されたのが税効果会計です。
図2の従来の税務計算による損益計算書では、税務計算により計算された税額をそのまま控除しているため、当期純利益は税引前当期純利益に比して歪なもの(ここでは少額)となっており、当期の業績を正確に表示したものとは言えません。これに対し、税効果会計による損益計算書では、例えば当期の費用でありながら、法人税法の規定では損金と認められないもの(損金不算入項目)に係る税額を、法人税等調整額として法人税等の金額よりマイナスして当期業績を反映した当期純利益を計算しております。
【税務計算に影響されず処理】
税効果会計の導入により、当期純利益が当期の業績を正確に表示する事が出来るようになり、税務計算に影響されずに正しい会計処理が出来るようになった訳であります。今迄ほとんどの企業は、@有価証券の価額は取得価額のまま計上しておりましたし、A退職給与引当金は税法限度額の計上に止めておりました。これらは誰が見ても正しい会計処理だとは思えません。税効果会計の導入によりやっと税法基準による会計処理からの脱却が出来るのです。
北國TODAY 2002冬季号 Vol.32に載りました