企業幹部の会計学
役員賞与を費用処理に
平成17年11月29日、企業会計基準委員会は、企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」を公表しました。
この会計基準によって、取締役、会計参与、監査役及び執行役に対する賞与(以下「役員賞与」という。)は、発生した会計期間の費用として処理することとされました。
【役員賞与と役員報酬の性質の類似とは】
従来、我が国においては、役員報酬は発生時に費用として会計処理し、役員賞与は利益処分により未処分利益の減少とする会計処理を行うことが一般的でした。
これは、役員報酬が職務執行の対価として支給されるものであるのに対して、役員賞与は利益をあげた功労に報いるために支給されるものと考えられていたためです。
しかし、平成17年7月26日に公布された会社法では、役員賞与は役員報酬とともに職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益として整理され、役員賞与と役員報酬は同一の手続により支給されることになりました。
このため、今後の役員賞与は、役員報酬と同様に発生時の費用として会計処理することとされました。
【未確定の役員賞与は引当金計上】
役員賞与は発生した会計期間の費用として処理することになりますので、当事業年度の職務に係る役員賞与を当期末後に開催される株主総会の決議事項とする場合には、その支給は株主総会の決議が前提となることから、当該決議事項とする額又はその見込額(当事業年度の職務に係る額に限る)を、当事業年度の費用として引当金に計上することとされています。
ただし、子会社が支給する役員賞与のように、株主総会の決議がなされていなくても、実質的に確定債務と認められる場合には、引当金ではなく未払役員報酬等として費用計上することとなります。
【適用時期等】
この会計基準は、会社法施行日以後終了する事業年度の中間会計期間から適用することとされています。
会社法の施行は平成18年5月と見込まれていますので、例えば平成17年6月から平成18年5月を事業年度とする会社の場合には、平成17年11月の中間決算において作成する財務諸表から適用されることとなります。
なお、これまで役員賞与を未処分利益の減少として会計処理してきた会社が、この会計基準の適用に伴い、発生した会計期間の費用として会計処理することとなった場合には、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として、注記の記載が必要となります。
【税務上も損金算入可能に】
「平成18年度税制改正の要綱」では、いわゆる定時定額要件が緩和され、従来は損金算入が認められていなかった役員賞与について、その一部を損金算入できるようにすることとされており、企業ごとの事業特性に応じたボーナスの支払いなど柔軟な経営に資することを可能とするように税制改正が予定されています。
このように、役員賞与の取扱いにつきましては、上記のような会計処理の取扱いの変更とともに、今後の税制改正の具体的な内容につきましてもあわせて留意していくことが必要となります。
北國TODAY 2006年早春号 Vol.42に載りました